1981年に“WINGS”を出してから次のCDを出すまでに2年以上かかりました。 その頃新しく4channelや8channelに独立してレコーディングができるテープレコーダーが次々と発売されました。 ミュージシャンがシンセサイザー等を使って、自宅で音楽を構築できる時代がやってきたのです。 僕も最初4channel、後に8channelのテープレコーダーを買い、またシンセサイザー、ドラムマシーン等を買い込んで音楽作りに励む毎日が始まりました。 まず作曲をし最初にリズムマシーンと一緒にピアノを弾き、そしてベース、シンセサイザー、パーカッション等をかぶせていくのです。
朝ワイフが仕事に出てから帰ってくるまでの間、ずっと一日中テープを作ることに没頭する毎日が続きました。
とにかくオリジナリティーのある音楽を作りたくて、その頃は主に4度、5度の音程やペンタトニック(五音階)を多数使って日本の空間と宇宙的空間をドッギングさせたような音を作っていました。 ピアノ、ベースという生の純粋な音にシンセサイザー、リズムマシーンというどちらかというと無機質な音を重ね合わせることによって両方の空間を感じることができるのです。
そういう曲が貯まるのに一年以上費やしたと思うのですが一つの完成されたデモテープとしてアメリカ、日本のレコード会社に発送しました。
そしてしばらくすると日本のビクターから返信があって、とても面白いサウンドで気持ちがいいからCDにしたいというオファーがあり、日本でそのデモテープをさらにクオリティーの高い音にするためにビクタースタジオで録音することになりました。
その頃は昔の仲間の本田竹広、峰厚介、村上寛が僕をNYから呼んでくれてツアーをする等、結構頻繁に日本に帰ってきていました。
ビクターからは“MUSIC INTERIOR”という新しいレーベルから環境音楽の一つとして発売されることになりましたが、僕は環境音楽として作ったのではなくただ自分の中にある日本の空間、そしてNYにいると特に強く感じる宇宙空間を表現したかっただけです。
このCDはバックがリズムマシーンでピアノ、ベース、シンセサイザーはすべて僕が演奏するというワンマンCDでしたがとてもユニークなCDに仕上がり、隅から隅までこれ以上ないというほど僕の考えと感性が行き届いています。
日本そして外国ではカナダで評判になりそれなりの達成感を感じていました。
クオリティー、ポプピュラー性はともかく、自分でも胸を張って言える僕のオリジナル“Chin’s Music”に他ならないものができたと思います。
そのCDは“MORNING PICTURE”と名付けました。
鈴木良雄