ニューヨークの思い出

(17) ありがとうNY

NYでの楽しい思い出と言ったらなんといっても自由で活気のある空気、特に僕の居た1973年~1985年はまだアメリカの良い部分がたくさん残っている時代だったと思います。とにかくNYにはありとあらゆる世界から集まってくる食文化がありよく行ったのは日本、中国、イタリア、スペインレストランなどで近所にあったイタリア居酒屋風の小さな汚いレストラン“Mamma Mia”で食べるスパゲティーカルーソとスパゲティーボンゴレは絶品で、イタリアからの移民がそのまま家庭から持ち込んだような素朴だけど深い味にいつも舌鼓をうっていました。
あと、今は日本人の間で有名になってしまったけど僕がNYへ渡って最初に住んでいたHoratio Street にあるスパニッシュ料理の店“El Faro” のパエリャとグリーンソースのコンビネーション、それはもう日本人のテイストにびったんこで前菜のサラダとシャングリアで料理が出てくる前にほろ酔いで待っているひと時は至福の時でした。
今でもNYに行った時にはよく行く店の一つです。
もう一つ食文化の豊かさと言えば日本では未だに味わえないパンと肉の美味しさ、今では日本でもずいぶん美味しいパンや日本独特の柔らかい牛肉等がありますがやはり西欧の伝統の食文化には奥深いものがあり敵いませんね。
特に印象に残っているのは自然食を売っている店の昔ながらの香ばしく焼き上げたパン、そしてジューイッシュの人たちが好んで行く本物のベーグルの店、それらには長い歴史が育んだ深い味がありました。又家の近所にはNYのプロのシェフ達が買いに来るフィッシュやミートマーケットがありましたからそこに行って牛肉のステーキ肉を買ってきてよく食べましたが3ドル(当時で500円くらい)も出せば分厚い大きなそれこそジューシーで肉の旨味がいっぱい詰まった日本の肉とは一味違うガツン!という肉が食べられました。とにかくアメリカは食物の物価が安い,全てが日本の半額ではないかと思われました。
あと、NYには美術館や博物館が沢山ありいくつかは行ったけどとても簡単には回れる数ではないです。
もちろん音楽しかり、カーネギーホールやリンカーンセンターのクラシックやジャズのコンサート、本当に気軽に本物の音を聴けるのでずいぶん耳を養ったと思います。
夏にはセントラルパークのシープメドウで行われるニューヨークフィルの無料野外コンサート、みんなが芝生に座りながら夏の夜空の下で聴く音楽は本当にこの国は豊かだなあと感じさせてくれるひと時でした。
あと、ビーコンシアターで聴いた“鬼太鼓座”やオペラハウスで見た歌舞伎はそれがNYだったということもあるでしょうけど日本の美を改めて認識し深い感銘を受けました。

お金さえあればNYは天国、お金がないと最悪、本当に上から下までピンからキリまですべて兼ね備えているのがNYです。
僕の中には大好きなNY (LOVE NY)と大嫌いなNY(HATE NY)がありますがやはりNYはエネルギーと勇気を与えてくれる特別な場所、結局好きです。
11年のNY生活で得たものが今でも体に脈々と流れているのを感じます。
ありがとうNY。

これで一応“NYの思い出”シリーズは終わります。また何か思い出したら書きます。

鈴木良雄